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前橋家庭裁判所桐生支部 昭和52年(少)208号 決定

少年 S・O(昭三四・八・二六生)

主文

少年を中等少年院(短期)に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、Aほか百数十名と共謀のうえ、

第一  昭和五二年二月二〇日午前〇時すぎごろ、埼玉県加須市○○○○○××××番地先路上において、いわゆる暴走族の違法行為を制止、検挙するなどの任務に従事中の加須警察署勤務警部補○山○三、埼玉県警察本部交通機動隊熊谷分駐隊勤務巡査部長○田○夫ほか十数名の警察官に対し、多数の石塊、空びん、木片などを投げつけ、棒、手拳などで殴打し、足蹴にするなどの暴行を加え、もつて右警察官の職務の執行を妨害するとともに、右暴行により、右○山警部補に全治まで約一週間を要する腹部、左手関節、左足関節打撲、前額部切創の傷害を、右○田巡査部長に全治まで約六週間を要する右第四中手骨剥離骨折、中指挫創の傷害をそれぞれ負わせ

第二  前記日時ころ、前記場所等において、加須警察署長○山○郎管理の警ら用無線自動車及び交通取締用車両並びに埼玉県警察本部交通機動隊長○藤○雄管理の交通取締用車両各一台に対し、こもごも多数の石塊、空びん、木片などを投げつけ、角材、竹棒などで突き、叩くなどし、もつて数人共同して右各車両の屋根、ボンネット、窓ガラス、赤色回転灯などを損壊し

たものである。

(適用法令)

第一の事実につき 刑法九五条、二〇四条、六〇条。

第二の事実につき 暴力行為等処罰に関する法律一条、刑法二六一条。

(処遇理由)

本件は、いわゆる暴走族である大日本国防軍に所属ないしこれに同調する者(付和雷同的に参加した者も含む。)百数十名が、深夜、多数の普通乗用車やオートバイを連らね、交通法規を全く無視した状態で群馬県太田市から埼玉県浦和市に向けて走行する途中、交通取締の警察官との間に生じたものであるが、そこに現われた交通法規無視の精神、道路交通上の急険性、集団暴行の態様及び程度、付近の住民をはじめ社会に与えた影響等の点をとらえても、極めて悪質な事件といわなければならないところ、少年は、本件時制服を着用して集会に参加し、先頭車に乗り、警察官やパトロールカーに対する攻撃をせん動し、自らは、二〇回位投石し、パトロールカーの屋根の上でとびはねる等積極的かつ悪質な行為をしており、その責任は重大である。

ところで、少年は、高校入学のころから喫煙、シンナー遊び、無断外泊等の問題行動が多くなり、昭和五〇年九月八日(道交法違反)及び昭和五一年四月五日(暴力行為等処罰に関する法律違反、道交法違反)に審判のうえ不処分となつたが、昭和五二年一月に大日本国防軍の集会に参加し、短期間のうちに極めて急速に暴走族に傾斜していつた。少年は、活動的で社交的な面もあるが、反面、自己本位で自己顕示性が強く、粗暴傾向がみられ、家庭内では家族にやつあたりしたり、不満を露骨に示すなどわがままいつぱいに振るまつている。これに対し少年の両親は、厳しさに欠け、自信のない少年への対応のため、少年の甘え、わがままを益々助長させる結果になつている。

以上の点を総合すると、この際、少年に対しては、社会の一員としての厳しさを自覚させるとともに、規則正しい集団生活により生活態度を改善し、規範意識をはじめとする社会性の陶冶助長を行なうため、短期間の少年院生活を経験させることが必要であると考え、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項、少年院法二条により少年を短期の中等少年院に送致することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 久保眞人)

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